2024/03/13
「製造業における収益改善」⑤ 仕組み化の基本と時間軸という基準の使い方
【目次】
1、「仕組み化」の基本
2、異常の元凶とは
3、多能工と俗人化、出来る人に仕事が集中しないようにすること
4、期限と進捗とフォロー
5、期限の設定とメンテナンスと投資、本来の役割分担
【要点】
・ 判断基準には、上限と下限が必要
・ 納期の無い仕事は仕事ではないが、ギリギリはダメ
・ モノの停滞・情報の停滞は悪さを教えてくれる
・ 納期ギリギリではフォローが出来ない
・ 情報の流れは双方向、上から下へ、下から上へ、それは組織図と経験値
1、「仕組み化」の基本
組織の「仕組み」がきちんと機能しているかを【見える化】するには、【判断基準】を仕組むことが大切です。
「5S」における「整理」、
【要】、即ち何を持って正常と判断するかという判断基準(交差を含む)を明確にし、その基準を超えた場合は上限方向でも、下限方向でも異常とする「仕組み化」です。
・ 何故上限を超えてしまったらダメなのか?
→ 良すぎても、安定的にその作業品質を維持すること、即ち再現性に乏しいから
或いは、時間的に速くできすぎたのであれば、必要な工程を飛ばしている可能性
があるから
・ 何故下限を下回ったらダメなのか?
→ 品質を満たしていない、即ち不良だから
下限はともかく、上限に対しては抜けていることが多いのではないでしょうか。
当然のことながら、必要な基準の条件設定を行った(「整理」)したら、社内で共有しなければなりません。
「整頓」、即ち【目で見る管理】が可能な状態にするのです。
正常・異常を判断するためのひとつのモノサシとして時間というモノサシを使うのは、非常に効果的です。
表現としては、
・ 納期
・ 期日
・ 締め日
等があるでしょう。
当たり前の基準であるだけに、最も活用しやすい基準です。
仕事とは、直接部門・間接部門の違いはあれども全て連動して進んでいくものですから、タイミングという基準は必ず存在します。
そして、お客さんからの評価(良し悪しの情報)という形で還元されて、また新たなサイクルを刻んでいきます。
故に、本来は最も分かり易く使いやすい【基準】であり、組織間連携を行う上での「仕組み化」の入り口となります。
間違っても、夏休みの宿題みたいに、ギリギリでやり繰りすること=仕事が出来る等とは思わないで下さい。
その状態は、仕組みが壊れていることを意味しますから。
2、異常の元凶とは
組織としての生産性に悪さをする例としては、タイミングを無視した動きが挙げられます。
速すぎても、遅すぎても何らかの悪影響が前後工程には発生する訳です。
モノの停滞・情報の停滞の発生です。
これが、仕事の遅れに繋がり、残業や要らぬストレスを発生させる元凶のひとつとなります。
このような事態のために、予め多少のバッファを持つための先行(前倒し)が全て悪いわけではありません。
予めその【基準を仕組んでいるのであれば】という前提が必要ですが。
しかし、担当者レベルで遅れるのが不安だから前倒しをしようとすると、その前後工程に負荷を掛けてしまうということが起こり得ます。
特に遅れは、後工程に手待ちを発生させるでしょう。
これは、残業の発生要因のひとつとなります。
3、最低限の対策「人に仕事を付ける」、俗人化からの脱却
基本的な仕事のタイミング、部門間の進め方が「整理」されて、標準化されていることが望ましいのはこのような理由があります。
また、それが共有されていなければ意味がないので「整頓」されていることも必須となります。
これらの条件があるからこそ、前後の応受援という仕組みを入れることが可能となり、組織の蛸壺化を防ぐ役割を付加することも見込めるようになります。
俗にいう、多能工化です。
但し、注意しなければならないのが俗人化との混同です。
よく出来る人、気が利く人に仕事が集中して、その一部の人のみが多能工という便利屋として使われる状態、これは絶対に避けなければなりません。
・ 組織間の役割の「整理」と「整頓」
・ 応受援の範囲の「整理」と「整頓」
・ 技量の平準化に向けた「整理」と「整頓」
これらは当たり前のことです。
しかし、意外と当たり前にできていないことでもあります。
まずは納期(期日・締め日等)という時間軸という基準を【見える化】し、タイミングをベースに連携を仕組むことは組織の生産性を上げるためにはとても大切なことと言えます。
4、期限と進捗とフォロー
どのような仕事にも、期限(納期)があります。
逆に、「期限の無い仕事は仕事ではない」とまでは言いませんが、期限がなければ進捗が分からず、フォローもできません。
どこで躓いていることすら把握できません。
なんせ、期限がないのですから。
しかし、期限と進捗とフォローは意外なほどリンクしていません。
正確には、「仕組まれていない」というべきでしょうか。
期限には、
・ 納期(お客様納期:後工程含む)
・ フォロー可能納期
のふたつに分けられます。
通常は、お客様納期を納期と言います。
それで、ギリギリまで粘った挙句にどうにもならない状態になっていないでしょうか。
納期ギリギリ何とか間に合ったつもりだったけど、ミスや不良が発覚したとかは、実のところ日常茶飯事でしょう。
そして、確実にお客様納期に影響します。
なんせ、既に猶予は使い切っていますから。
さて、これは正常な仕組みと言えるでしょうか。
納期から逆算したら予定は組めます。
一応、進捗管理もできるでしょう。
しかし、納期ギリギリの綱渡りでは、万が一ミスや不良があった場合はリカバリーが出来ません。
本来、予定にはフォロー可能納期を設定しておく必要があります。
工程上の、最終検査的な位置づけでしょうか。
若い方に経験を積ませるのであれば、猶更です。
70%程度で一度チェックを入れなければ、上司との認識ギャップで要らぬ負荷を掛けかねません。
まあ、これは昇進して不慣れな管理職等にも言えることですが、心理的な安全性を確保するためにも仕組んでみる必要があるように思います。
5、期限の設定とメンテナンスと投資、本来の役割分担
企業は、適切な利益を得ることで自社の「清掃」、即ちメンテナンスを行い最低限度の現状を維持できます。
本来は、それ以上の利益を再投資することで次の成長を目指す必要があります。
それは、スタートアップ的で革新的な取組みばかりである必要はありません。
人財の確保と育成(後継者の育成含む:世代交代の準備は最も大切な投資です。)、設備の更新等、必要だけど意外と計画的に出来ていない事柄ではないでしょうか。
ここには、仮の期限を設定した計画、即ち経営計画という「整理」と「整頓」が必要になります。
企業活動の必要条件を「整理」するのは、経営者→管理者→実務者の順、即ち組織図に沿って落とし込まれ、活動結果が下から上に情報として上げられます。
かっこよく言い換えれば、全ての企業活動は経営理念より導かれたビジョン、それに基づいて策定された戦略に沿って実行され、結果としてのギャップが次なる経営課題に格上げされます。
これは、上意下達という側面もあるでしょうが、役割分担というべきでしょう。
それなりの経験と知見を持った者が、全体を俯瞰しながら方向性を決める、それに対して実践経験に富む者、これから積上げる者が実際に行動しながら経験と知見を積上げていき、やがてバトンと受け取るために。
ボトムアップとは、実行した結果としてのギャップが下から上に情報として報告される事象、その情報の発信元は経営者、管理職です。
組織図の頂点と結節点、改善(改革)を進めるためのキーマンとは、どこまで行っても経営者とそれを支える管理職となのです。
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