2023/10/25
「経営改善:環境変化への適応」
1、課題設定
課題設定、これがうまく嵌れば経営改善は大きく進みます。
課題とは、現状と(当面の)目指す姿とのギャップであり、適切な課題設定が出来るということはこのギャップを正しく把握していることを意味するからです。
また、ギャップを把握する仕組みが機能している証拠とも言えます。
課題の洗い出しは「5S」における「整理」に当たります。
取組むべき必要事項の洗いだし、絞り込みに相当するからです。
それに対して課題を設定するとは、見えるようにすること、即ち「整頓」です。
これからそれに立ち向かって行くことを宣言している状態と言えます。
「整理」と「整頓」の一巡目が社内で回せた状態と言い換えることもできるでしょう。
課題とは、
・ 課せられた題
・ 解決しなければならない問題
・ 果たすべき仕事
等の意味があり、それを設定するとは、自らにその解決を課す、あるいは課した状態を意味します。
やるべきことが明確に捉えられていてこそ、行動に移すことができます。
また、「整頓=目で見る管理=有言された状態」であれば、行動に移す際気遣いは必要ありません。
組織として、オフィシャルな取組みに格上げされた状態なのですから。
2、経営者、管理者の課題とは
そして、経営者、管理者の「課題=ミッション」はこのギャップを見えるようにすることです。
日々のルーティンワークに流されることなく、常に自らの会社や職場がどうあるべきかを問い続けること、即ち「仕事の整理」を継続することです。
だからこそ「5S」の展開とは難しいのです。
会社は組織であり、基本的に機能分化されています。
複数の機能を兼任することは珍しいことではありませんが、それでもそれぞれの機能に対して「(当面の)あるべき姿」を描くのは、漠然と課題を探すことに比べれば遥かにハードルが下がるのも事実です。
ハードルがなぜ下がるかと言うと、具体的な絞り込みが可能となっているからです。
これもまた「整理」です。
3、組織としての果たすべき機能は常に外側に向かう
会社とは機能分化した存在です。
ひとりで出来ることには限界があり、それを越えるために役割分担をしているのです。
それを「整理」「整頓」したものが「組織図」となります。
大項目的には、
・ 経営機能
・ 営業機能
・ 製造機能(製造業の場合)
・ 総務、経理機能
等に分かれているでしょう。
しかし、それぞれの機能が本来担う役割を厳密に突き詰めているでしょうか。
会社もその中の組織も、基本的には外部(市場及び他部署)の情報を元に活動します。
しかし、この事実は意外と認識されていません。
だからこそ、蛸壺化等が発生するのでしょうが、困ったものです。
組織が担うべき機能を考える時には、外部(他部署含む)に向かって自部署がどのような機能を担っているか、果たしているかという風な視点が必要不可欠です。
会社組織とは、それぞれが役割分担をしながら大きくはお客様に対して何らかの付加価値を提供し、その対価を得て存続するものだからです。
自部署も、他部署に対しては何某かの付加価値を提供しています。
その繋がりが市場に届き、評価としての情報がフィードバックされます。
大きく俯瞰すると、商売の原点みたいな感じでしょうか。
4、故に、「仕事に人を付ける」必要がある
組織内の全ての機能は、外に向かって働きます。
外からの刺激(情報)に対して、内部で何かしらの付加価値を付けてバトンを渡していくイメージです。
外からの刺激(情報)は常に変化します。
変化しているのです。
それに対して、同じことの繰り返しが果たして通用するでしょうか?
難しいでしょう。
では、「人に仕事を付ける」とは、どのような状態を生み出すでしょうか。
まず、変化を否定出来る環境を生み出すでしょう。
また、周囲から「見えない」状態を生み出すでしょう。
何せ、自分しか分からない世界を造ってよいという許可証を会社側が出している訳ですから、当然そうなります。
しかし、外部環境は時々刻々と変化します。
どこかで行き詰ります。
しかし、その時点では「自分(人)に仕事を付けてもらっていた」方は、変化への順応が非常に困難になっています。
人間は、慣れてしまう生き物ですから。
慣れ浸しんだ環境を変えたくない生き物ですから。
しかし、人生百年等と言われる昨今、これでは報われません。
故にこそ、時々刻々と変化する環境に合わせて仕事を見直し、その「仕事に人を付け直す」ことを仕組む事が必要なのです。
変わることが当たり前、と言う基準を社内に仕組むことが必要なのです。
そして、常に訓練を課す・課されるように仕組むことが必要なのです。
でなければ、本当の意味で人材を活用することは出来ないでしょう。
今日と同じ明日は決してないのですから。
一日が過ぎる毎に、人は確実に年を取ります。
小さくても、経験を積重ねます。
それを、きちんと認識させるように仕向けなければなりません。
5、付け焼刃では通用しない「雇う側も、雇われる側も」
「且つての成功の方程式が現在の窮境に繋がった。」
「過去の成功体験にしがみついているだけでは、環境の変化に対応できない。」
これは、極々当たり前のことですが、意外と得心していないことかも知れません。
しかし、環境は時々刻々と変化します。
ましてや、自社も競合他社も生き残るために次々の策を打つのは当然のこと、外部環境の変化に対応することは経営の最重要課題です。
しかし、現実には過去からの流れから脱却することの難しさを日々感じるのが経営者ではないかとも思います。
最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)を含め、如何に情報を活用して業務を効率化するかという議論が多く聞かれます。
しかし、これもまた手段であり、DXそのものは道具の活用のやり方・仕方です。
では、道具の使い手である人についてはどうでしょうか。
本質的には、人は過去の経験から学び、成長するものです。
故に、簡単には変わりません。
学び直しによる知識取得も大切でしょう。
しかし、付け焼刃で通用するほど世の中甘くはありません。
自社を変えるためには、やはり経営戦略に合わせて仕事の中で訓練させていくことが肝要です。
自主的に学び自らを変えていける人材もいるでしょうが、それは極少数派、もしかしたら独立予備軍に当たるかもしれません。
ずば抜けた能力を持つ人材を確保したいとの誘惑は強烈でしょう。
しかし、現在の人的戦力を状況の変化に合わせて活かせない状況で、そのような人材を会社が使いこなせるでしょうか。
雇う側も、雇われる側も付け焼刃では通用しないのです。
まず、自らの足元を見て、環境の変化に合わせて愚直に社内の仕組みを変えていくこと、それに合わせて人を育てる=新たな経験を積ませていくこと、遠回りに見えて、実は最短ルートを走ることになります。
雇う側は、実はこの最短ルートが見えているでしょうか?
今日と同じ明日、という前提に逃げ込んでいないでしょうか。
雇われる側も同じです。
変化を恐れても意味がありません。
コントロール出来ない部類のものですから。
では、コントロールできるものは何でしょうか?
それは会社内部及び自らの基準であり、行動です。
お互いに、足元を改めて見直しては如何でしょうか。
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