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2023/11/22

「仕事に人を付ける」ということ

【目次】
1、職人芸で大丈夫ですか?
2、仕事と作業の区分
3、企業としての仕事の目的を果たすために【組織】がある
4、組織が必要な意味とは

【要点】
・ 「人に仕事がついていること」、それは個人が仕事の進め方からペースまでを決めているということ
・ 「その人の仕事のペース」が基準では、業務改善のメスが入らないのと同意義
・ 仕事とは付加価値を上げること、作業とは仕事の目的を達成するために行う行為、動作の組み合わせ、この違いを理解することが重要
・ 「組織は戦略に従う」(アルフレッド・チャンドラーの言葉より)
・ 組織化とは、「仕事に人をつける」取組みである

1、職人芸で大丈夫ですか?
  
中小企業で多く見られる現象のひとつとして、「人に仕事がついていること」が挙げられます。

要は、その人しかできない仕事が沢山あり、その人の仕事のペースが全体の仕事のペースになっているという訳です。

病欠されると大変、最悪重要な仕事が止まったりします。

大抵はその逆で、長時間の残業や休日出勤、自宅に持ち帰っての対応等、真面目に根詰めて頑張る方が多いようですが、これはこれで【働き方改革】という世の中の流れには明らかに逆行してしまいます。

また、【人手不足】という社会的課題の発生要因のひとつとも言えるでしょう。

意外かもしれませんが、非常に効率が悪いことが多いのです。

結局のところ、「その人の仕事のペース」が基準では、業務改善のメスが入らないのと同意義だからです。

これらの原因の多くは以下のように考えられます。

・ 創業以来自然発生的に仕事の分担が始まり、見直しされることなく現在まで続いている
・ 1~2度は世代交代があったはずだけれども前例踏襲を貫いていしまっている
  → 経営者は変わっても、ベテラン社員さんの仕事のやり方は変わっていない、変えられていない

こうなると、ひとつひとつの仕事が職人芸のような扱いになってしまいます。

なんせ、「人に仕事がついている」のですから、改善のニーズが出てきません。

仕事が自分についてしまっている本人も、慣れたやり方を変えたくもないでしょう。

後々に、この方が定年を迎える頃には大変なことになるでしょう。

2、仕事と作業の区分

「人に仕事がついていること」が経営改善を阻害していることに気づいていない経営者は意外と多いのが実状です。

下手をすれば社長自身がルーティンワークを沢山抱え込み、経営という最重要な仕事が手薄になっていることもあり、外部環境の変化に対して後手に回ってしまう大きな要因のひとつになっていることさえあります。

実際、当社が支援している企業の多くもこの点の解消が初手の大きな課題となる傾向にあります。

では、何故こうなってしまうかといえば、仕事と作業の区別ができていないことと、標準化不足が挙げられます。

ここでいう仕事とは付加価値を上げること、作業とは仕事の目的を達成するために行う行為、動作の組み合わせです。

多くの企業では、この区分けが出来ていません。

例えば、

・ 企業としての仕事とは?
  世の中に必要とされる価値を適正な価格で提供することで利益を得て継続すること
・ 営業としての仕事とは?
  自社の提供する価値(サービス)を知ってもらい、使ってもらう(体験:課題解決)ことで利益を確保すること
→ そのための手段として顧客訪問や認知活動を含む営業活動という作業を行うこと
・ 製造としての仕事とは?
  安全管理を大前提に、適正な範囲での品質を、適正な納期の範囲、適切なコストの範囲で造り込むこと
  → そのために、モノや設備を動かし、メンテナンス等の作業を行うこと
・ 総務としての仕事とは?
  組織間の連携を円滑にするための結節点として、現状把握や阻害要因排除を行うこと
  → そのために、経理的な作業、人事的な作業、各種手続き等の作業を行うこと

上記は考え方の一例ですが、このように考えると、仕事とは会社として付加価値を上げるために役割分担をしながら明確な目的を持って取組むべきことであり、それを具体化するために各種作業があるという位置づけが可能となります。

このような考え方のベースにあるのが、【5S】となります。

【5S】のものの見方・考え方の詳細は「5Sを仕組む意味」のコラムを参照していただければと思いますので、ここでは割愛します。

皆さんは自らの仕事を誰かに説明するときに、【経営】という視点から自部署及び自らの存在意義、即ち目的から話が出来ているでしょうか?

一度振り返って見ることをお勧めします。

3、企業としての仕事の目的を果たすために【組織】がある

仕事の目的を明確に設定することは即ち意思決定そのものと言えます。

企業としての目的や存在意義、これらは時々刻々と変化する環境に適応しながら更新をし続ける必要があります。

当然のことながら、これに合わせて【経営戦略】もまた更新されます。

「経営戦略」とは、「企業体がその経営目的を達成するための施策・方策全般」のことです。

それを実現させるために【組織】があります。

「組織は戦略に従う」

アメリカの経済史学者であったアルフレッド・チャンドラーの有名な言葉です。

経営目的を果たすために「経営戦略」があり、「経営戦略」を実施する手段として「組織」があるとの位置づけでしょうか。

しかし、時として逆転現象が起きるのが世の常です。

組織防衛のために戦略が構築されるパターンです。

そして、この組織防衛を喚起しやすい状況とは、「人に仕事がついている」状態です。

全体を俯瞰することなく、自らの立場を守るために声の大きな者に引きずられるような状態と言えます。

笑えない状態とも言えますが、意外と身近にあるのではないでしょうか?

このような状況に陥らないためには、組織とは手段であるとの基準の継続的な振返りが必要でしょう。

「経営戦略」に基づいた役割を、組織のどの部分が担うべきか、担うためには組織の機能はどの様な更新が必要か、これは【経営改善】に取組むには避けることが出来ません。

これらの取組みは機能分化に対する「整理」の端緒となり、トップから順番に権限と責任の基準更新が始まります。

これが組織化(曖昧だった組織機能の明確化)につながります。

4、組織が必要な意味とは

本来、ひとりで出来ないから機能・役割を分けるのです。

役割を分けるということは、専門性を上げてやるべきことを絞り込み、仕事に質と生産性を向上させることだからです。

それが必要なくらい仕事量が増えたからこそ組織が必要になるのです。

人の能力の総量には大きな差はありません。

但し、適性には大きな違いがあります。

ある部分に秀でている以上、別の部分は苦手なものです。

適性に合わせて役割分担が決まりますが、出来る人に負荷を集中したのでは意味がありません。

組織化とは、「仕事に人をつける」取組みであり、「人に仕事をつける」取組みではないからです。

そのために、担うべき機能や権限・責任の範囲の絞り込みが必要になります。

結果的に、上位者順に担うべき仕事が明確になってきます。

やるべき仕事が明確になれば、その仕事の目的を果たすための作業は可能な限り標準化して部下に振る必要が出てきます。

自分しかできないやり方では、部下にバトンを渡すことは困難だからです。

そのため、標準化に向けたニーズが出てきます。

こうして、気が付けば組織としての生産性が上がるのです。

仕事のバトンを繋げていくことが、人を育てることにも直結します。

何事もやってみなければ身に付きません。

そして、「やってみる」という経験は変化点を与えることでしか発生し得ません。

変化する環境の中、組織もまた変化する必要があり、それに合わせて役割分担も変わり続けます。

人の能力は有限ですが、変化に適応することで伸びしろは増えていくものです。

それを仕組むための手段としての「組織」、位置づけを変えることで大きく変わるものがあることを理解する必要があるのではないでしょうか。

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