2024/06/12
「物流改善」 ⑤ 「仕組み」と「管理」と「訓練」と
【目次】
1、「管理基準」の「整理」
2、アナログで出来てこそデジタルは機能する:「訓練の重要性」
3、ピッキングについて
4、「管理の軸」としての「在庫置き場」
5、アナログからデジタルへ:メンテナンスに対する基準の重要性
【要点】
・ タイミングという「管理基準」もまた、【目で見る管理】である
・ 仕組みとは、まずは異常に対して速やかに動くということ
・ 気遣いなく動くことを仕組む
・ ピッキングの基本は「指示書」「運搬具」「お店(在庫置き場)」のセット
・ 管理の軸を決めることの基本は場所(住所)の固定化
・ 情報更新は人が行う仕事、デジタル化を正常に運用するにはこのアナログの仕組みが
欠かせない
1、「管理基準」の「整理」
荷揃え場の設定の基本は並列に二つ、これが一番シンプルで安全な作業を可能にしますが、
合わせて管理基準を整備する必要があります。
「5S」における「整理」です。
何かを仕組むとき、必ず自分以外の誰かにも判る条件を整備する必要があります。
誰にでも判る基準とは、時間(完了するタイミング)や場所、荷姿等「目で見えるもの」が良いでしょう。
ここでは、荷揃え用のダイヤグラムを設置することで遅れ進み(正常異常)を管理することを考えてみます。
*ダイヤグラム自体は、出荷バースのダイヤグラムと一緒に、1枚で管理してもOKです。(NO1バース:A置き場・B置き場みたいな感じです。)
ここで重要なのは、管理ポイントを明確に設定して、遅れ進み(正常異常)や場所・荷姿等の管理基準の「目で見る管理」を導入するということです。
そして、正常異常を判断する基準となる時間等を便毎に決めて、異常時には信号を出す仕組み(赤旗を立て、携帯で管理監督者に知らせるとか)を入れて、それに対して管理監督者が対処するという一連のルールを構築することになります。
2、アナログで出来てこそデジタルは機能する:「訓練の重要性」
この基準やルールが人で運用できるように訓練して、運用ギャップを埋めれば電子的なシステムに切り替えるのも良いでしょう。
今は簡易な電子システムも沢山ありますから。
例えば、荷揃え完了時に決まったバーコードを読み込ますことで完了信号を出すことで作業時間を自動で蓄積することも簡単でしょう。
逆に、予めタイマーを設定しておき、完了バーコードを読み込ますことでアラートを止めるように設定しておけば、遅れればアラートが鳴り監督者の呼び出しと緊急対応への移行も人の気遣い無しに進めることも可能でしょう。
そうすることで、遅れた理由の検証もやり繰りを取り除いた状態で行うことが容易にも成ります。
ただ単に「見えるようにする」だけでは意味がないのがこの辺りにあります。
(この点、よく勘違いされますので、敢えて強調させていただきます。)
異常の信号がでた場合、管理監督者が速やかにまずは対処に動くことを仕組んでおくこと、そして訓練して実施できるようにしておくことが重要になります。
無論、マイクロマネジメントを推奨している訳ではありません。
基本的な動きを仕組んでおくこと、変化点があれば必ず共有して標準化することで「人に仕事を付ける」状況を回避することが大切なのです。
「5S」における「清潔」と「躾」のサイクルがここでも重要な役割を果たします。
その為の仕組み、そのためのシステム、そこから来るスピーディな対応こそが、組織文化を変革し、会社と働く人々を強くすることを忘れないでください。
改善とは、組織文化(企業風土)の変革への挑戦であり、それが差別化の原資となり、お客様の選ばれるベースとなります。
3、ピッキングについて
荷揃え場の設定の仕方と、「目で見る管理」についての重要性、仕組んで訓練をして実行できる体制を整備する重要性は仕事を仕組む上での大前提です。
次は、集荷(ピッキング)について考えてみます。
今はデジタルピッキング全盛といった感じではありますが、これまでと同じように、電子的システムを入れる前にアナログでの対応をお奨めします。
システムというのは、業務の見直しがあって初めて活きるものであり、システムを入れても使いこなせなければ意味がないからです。
ピッキングの基本は「指示書」「運搬具」「お店(在庫置き場)」の3点セットにあります。
これらの情報が、基本は商品コードやロケーションコードとリンクして初めて電子的システムは機能します。
4、「管理の軸」としての「在庫置き場」
ピッキングの3点セットのひとつである、「お店(在庫置き場)」の機能は重要です。
基本は、「5S」の中の「整頓」という基準の中ででてきた、「三定」となります。
「定位:決められた位置(場所)」
「定品:決められた品物(置くもの)」
「定量:決められた量、故に決められた荷姿(量と置き方)」
固定ロケーションの場合ならば、場所という住所を基準に固定した商製品が置かれて登録されるでしょう。
フリーロケーションの場合ならば、場所という住所を基準に商製品(住人)自体は時々刻々と変化(引っ越し)しながらも場所という軸で登録されるでしょう。
要は、管理の軸を決める必要がある訳です。
この基本情報が電子的な情報に置き換えられ、活用されるという点は同じなのです。
5、アナログからデジタルへ :「メンテナンス」基準の重要性
故に、組織の中にこの情報の整備と更新という「5S」における「清掃」という基準が整備されていないと、せっかくの電子的なシステムも上手く働きません。
固定ロケーションであれ、フリーロケーションであれ、時々刻々と置き場所という住所に置かれている商製品(住人)は変わります。
(フリーロケーションでは当然ですが、固定ロケーションでもスクラップ&ビルドはありますので)
変わる以上は、情報更新という名のメンテナンスが欠かせません。
当然、メンテナンスタイミングを常に「整理」した上で「整頓」しておかなければ機能しないということです。
これらの仕組みもまた、アナログで人が動くように仕組まなければ始まらないのです。
結局のところ、自らの企業の仕組みを既存のシステムに合わせに行くか、システム自体を自社の仕組みに合わせていくか、どちらにしても改善経験をきちんと積み重ねて仕組み化しなければデジタル化は上手くいかないのです。
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