2024/09/11
「5S」を仕組む意味 「5S」 ② 赤字脱却(収益改善)に向けた「5S」の効果とは?
「5S」の目的
① 【売上を増やして、コストを下げること(収益改善)】
② 【組織文化の変革(良い組織文化の醸成)】
1、「経営戦略」と「5S」
企業とは「ゴーイングコンサーン」、即ち将来に渡って事業を継続させるべき存在です。
存続しなければ「経営目的」を基本は果たせません。
故に、限りある経営資源を最大限有効活用する必要があります。
経営資源とは、
人
モノ
金
情報
等となります。
これらを有効に使い、外部環境に立ち向かい、生き残っていくことが「経営」です。
重要なのは、
・ 環境に適応すること
ではなく、
・ 環境の変化に適応し続けること
です。
その為に、「経営戦略」が必要となります。
成り行き任せではどこに流れ着くか分かったものではありませんのである意味当然のことです。
故に、企業における取組みは、全て「経営戦略」にリンクしなければ(させなければ)なりません。
そして、「経営戦略」とは「企業体がその経営目的を達成するための施策・方策全般」を意味します。
この「施策・方策」は経営資源である
人
モノ
金
情報
等に対して機能します。
機能するように仕組まれます。
そこから得られる成果が、
① 【キャッシュフローを考慮した利益の確保】
② 【外部環境の変化に対応し得る組織文化】
となります。
ここに、経営改善に対する「ものの見方・考え方:思考プロセス」としての「5S」が寄与するのです。
「5S」という「ものの見方・考え方」を活用する目的はふたつ、
① 【売上を増やして、コストを下げること(収益改善)】
② 【組織文化の変革(良い組織文化の醸成)】
まさしく、「経営戦略」を機能させるための「ものの見方・考え方:思考プロセス」そのものだからです。
では、「5S」という「ものの見方・考え方」を活用する目的に対して得られる効果としてはどのようなものがあるでしょうか。
2、「5S」のふたつの目的に対して得られる具体的効果
【売上を増やす効果】
・ きれいな現場(職場)は最高のセールスマン
・ 経営革新のための戦力確保
【コストを下げるための効果】
・ 問題の顕在化=目で見る管理の導入
・ 生産性の向上による原価低減
【良い組織文化の醸成】
・ 変化に気づく感性のアップ=人財育成
3、【売上を増やす効果】とは
「5S」を継続的な活動として徹底的に取組んだ結果、業績が向上したというお話は皆さまも聞いたことがあるのではないでしょうか。
まあ、掃除をすれば儲かるとかいうお話もありますね。
しかし、半信半疑といったところが本音ではないかと思います。
それでは、【売上を増やす】ことへの貢献、効果①「きれいな工場は最高のセールスマン」から考えていきます。
3-1、効果①「きれいな工場は最高のセールスマン」
「整理・整頓・清掃」が行き届いている職場(現場)とは、お客様の信頼を得るための最高の武器、営業ツールなり
会社とは【ショールーム】
例えば、製造業においては、お客様に品物と共にそれが作られている現場を見ていただくことは、100の言葉よりも雄弁にその会社のモノづくりに対する姿勢を伝えます。
すなわち、会社全体が【ショールームの機能】を果たすわけです。
見学受入れに熱心な企業の業績が良い傾向にあるのは、得心できるところではないでしょうか。
・ 品質保証の証明書
また、安全と品質を確保するためには、必要なものが、決められた場所に、使いやすいように置かれていることが大切です。
必要なものが=「整理」
決まられた場所に、使いやすいように=「整頓」
掃除ができていない設備では、品質面はもちろんのこと、保全の観点からも本当に納期が守られるのかという不安を抱かせてしまいます。
いつでも使用に耐え得るように、きれいに=「清掃」
お客様もプロ、必ずこのような視点で見ています。
「5S」を徹底するということは、お客様の信頼を得て、新たな受注につながる可能性が高いという訳です。
3-2 効果②「経営革新のための戦力確保」
「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇(かたき)は敵なり」
風林火山で知られる、武田信玄の言葉です。
「経営革新」が必要だ!
この言葉を聞かない日はありません。
しかし現実は過酷、日々の業務に追われて、なかなか新しいことに取り組むことができないのが実状です。
勿論、ひと・モノ・設備等に十分な余裕が持てれば良いのかもしれませんが、それをするといことは過剰投資と同意義であり、経営的には当然マイナスです。
また、人材に対する投資に後ろ向きの傾向があるというか、「人に仕事を付ける」という悪い癖が付いた企業も多く、悪循環に拍車を掛けている状況です。
「人に仕事を付ける」ことと「人材に対する投資に後ろ向き」なことがどのような関係があるかというと、端的に言えばそこで成長を止めてしますからです。
人は、慣れ親しんだ環境から脱却することは基本苦手です。
困難が待ち受けているのが分かっているから当然でしょう。
それに、企業の「仕組み」が拍車を掛ける訳です。
慣れた人に任せておけば楽だからと。
人に対する投資とは、何もお金を掛けることだけではありません。
若干脱線しましたので、元に戻します。
まず大前提として、仕事に対するキャパシティ(製造でいうところの加工能力)というものは決して固定的なものではないということがあります。
そもそも、今が筒いっぱいであるというのはどの様な基準で判断しているのでしょうか?
定時稼働時間内、フルに無駄なく仕事をしているという判断は、何処から来ているのでしょうか?
残業しているから、余裕がない。
何故残業しているのでしょうか?
本来、現有戦力からでも捻出することが不可能ではないのです。
一説によると、真に価値を生む正味作業は仕事全体の10~15%程度であり、その他価値は生まないが現状では仕方なく行っている作業、そしてムダが大多数を占めていると言われています。
実際、私自身も自らの仕事を作業レベルまで詳細に分析して仕訳を行ったところ、同じような結果が出たという経験が何度もあります。(正直、その当時は落ち込みましたが)
そして、「5S」は価値を生まない85~90%の部分の削減に間違いなく効果があります。
仕事そのものに対して「整理」という基準を当てはめてみれば、「ものの見方」が変わります。
「その仕事の最終的な成果物が価値を生んでいるかどうか?」という視点(基準)で「整理」「整頓」が始まります。
この視点(基準)は、実は改善活動の肝であり、仕事の負荷を下げるための基礎となります。
本当に価値を生んでいる仕事と、価値を生んでいない仕事に仕分けてしまうのです。
「5S」とは「ものの見方・考え方」ある意味判断基準です。
①「整理」することで、いらないものがなくなります。
価値を生んでいない仕事や作業の削減が可能となります。
= 時間が空き、場所が空き、管理工数も減ります。
②「整頓」することで、探す、迷う、取り置きや持ち替えなどの作業や動作のムダが減ります。
【見えるように】することで、第三者チェックが入り、価値を生んでいない仕事や作業の削減が可能となります。
= やらなくて良いことが減り、時間が浮いてきます。
③「清掃」することで、設備を含めた現場の異常にいち早く気づくことができます。
物事、正常に推移している間は手間が掛かりません。
少なくとも、仕事とは元来そのように仕組まれています。
=保全の第一歩、設備を含めたトラブルが減ると、同じく時間が浮いてきます。
このように進めることで、いわゆる7つのムダのうちの「作りすぎ、在庫、不良、運搬、動作、手待ち」などのムダが間違いなく軽減されていきます。
④「清潔」整理・整頓・清潔された状態を維持すること、即ち何を持って維持されているかという基準の設定と、維持するための施策・方策・手順を決めざるを得なくなります。
=維持できる「仕組み」を構築する必要性、即ちニーズが顕在化します。必要性を感じることで、自ずと具体的な取組みに繋がります。
特に、経営層側が。
⑤「躾」決めたことを守らせる、いや守ってもらおうとすると、自ずとやり難いところを直さざるを得なくなります。
何処がやり難いか、見えなければわかりません。当然「整頓」が入ります。
= 何を持って守られているかという基準の明確化と標準化を行うと共に、常に変化
し続ける環境に合わせた見直しを行うことに繋がります。
これもまた、仕組み化です。
このように「5S」のプロセスを踏んでいくだけで、あたかも仕事の顔をして紛れ込んでいたムダが顕在化してきます。
あとは、少しずつそのレベルを上げていくことで間違いなく会社の基礎体力は向上=生産性の向上につながるわけです。
そして、生産性が向上した分、これまでより少ない人員で対応が可能となり、浮いた人員(工数)を新たな戦力として振り向けることが出来るわけです。
「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇(かたき)は敵なり」
「経営革新」に取組むためには、最低限「人」がいないと始まりません。
そして、「人に仕事を付ける」型から「仕事に人を付ける」型に変えなければ変化点に耐え得る「人」は育ちません。
そして、負担が増えるばかりでは「人」は動きません。
正しく価値のある仕事に付けるために仕組むこと、「5S」の本質はここにあります。
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