2024/12/13
モノや情報の流れから見た改善の着眼点 「物流改善」 ⑦ 動線という「流れ」を仕組むこと

【目次】
1、レイアウトやロケーション設計の重要性
2、「指示書」に必要な情報の「整理」
3、作業という流れの「整理」
4、流れを決める軸としてのレイアウト・ロケーション管理
【要点】
・ モノの置き方、置く順番が作業動線を縛る
・ 「分かっている者」しかできない状態とは、即ち「人に仕事を付けた」状態
・ 沢山の情報を載せるのは、管理側の不安と怠慢の賜物
・ 動線とは、作業だけにあらず、目の動き、手の動きもまた動線である
・ 流れを決める基準として、「三定」はある
・ 場所→住人→量の順番で決まる当たり前は意外と認識されていない
・ 意外と不明確な「使う順番を決める基準」、これを持つことは大切です
1、レイアウトやロケーション設計の重要性と「指示書」
ピッキングの基本は「指示書」「運搬具」「お店(在庫置き場)」の3点セットにあります。
但し、単なるピッキングのためのみにこの3点セットがある訳ではありません。
それぞれのパーツは仕事を進める上でも必要不可欠なもの、自らの職場を振り返ってその意味を考えることもまた必要でしょう。
今回は主に「お店(在庫置き場)」即ちレイアウトやロケーション設計について考えます。
当たり前のことですが、「お店(在庫置き場)」のレイアウトやロケーションが作業動線を決めます。
モノの置き方、置く順番が作業動線を縛ります。
ある意味、制約条件となるのです。
これは、実際のところ全ての仕事に当てはまります。
何処に、何が、どういう順番で、どのように置かれているか、並べられているか、人の動きはこれらをなぞらざるを得ないのですから、とある意味当然です。
しかし、意外なほどにレイアウトやロケーション管理は軽視されがちなのは何故でしょう。
・ 分かっている者がやればよい。
・ やる者(担当)が分かればよい
この基準で職場が動いているからです。
この基準とは、即ち「人に仕事を付けた」状態です。
決して良い状況ではないのですが、脱却するのにはかなりの努力が必要となります。
このように仕事の重要な条件決めであるレイアウト・ロケーション管理ですが、これらを指示の形で「整頓」したものが「指示書」になります。
2、「指示書」に必要な情報の「整理」
「指示書」に表記する情報は、本来ポイントを絞り作業に最低限必要な情報にするべきです。
その理由は、情報過多では目移りするからです。
目移りするということは、ミスを誘発する危険性があるということです。
人間の集中力には当然のことながら限界があります。
若干の個人差はあるかもしれませんが、基本は同じようなものです。
要らぬ情報は、人を混乱させるだけだという当たり前を大前提に「指示」を形にする必要があるでしょう。
また、沢山の情報を載せているのであればその理由を検証する必要もあるでしょう。
多くの場合、そこには不安があります。
指示する側が、条件を絞り込めずに現場に丸投げするのです。
これもまた、「人に仕事を付ける」ための悪い仕組みと言えます。
省人化マテハンを全ての構内物流に導入することは費用的に困難ですので、人が介在する余地は必ず残ります。
特に、柔軟に判断してくれるからこそ人に任せた方が当面楽なことは事実です。
これは、ある意味見事な悪循環の出来上がりと言えます。
不安を言い訳に、要不要の別なく現時点で出せる(出せてしまう)情報を全て載せて、後の判断は個人に任せる訳ですから、作業品質上のバラツキも大きいでしょう。
3、作業という流れの「整理」
悪い見本はともかく、このようにならないためにも作業の流れを設計する必要があります。
作業者が実際に行う作業順に並べ、表記するのです。
流れの「整理」を行い、「整頓」して目で見えるようにする訳です。
具体的な例としては、
・ 次に取りに行く場所(お店の位置=所番地:住所)
・ 食品であれば指定される賞味期限
・ 集荷するケース数(端数がある場合は端数の数)
これらが目の動きに合わせて順番に並んでいるだけでも効率よく集荷のためのピッキング作業が可能となります。
繰り返し強調しておりますが、これには「お店(在庫置き場)」にきちんと日付順に商品が格納されていることが大前提です。
「5S」というものの見方・考え方が社内の基準になっていなければ、そもそも成り立ちません。
基本的なデジタルピッキングシステムは、これを電子端末に順番に表記するようにしたシステムといっても良いでしょう。
仕組みを整えた上でシステム化することが必要な所以です。
4、流れを決める軸としてのレイアウト・ロケーション管理
ピッキングの3点セットのひとつである、「お店(在庫置き場)」のレイアウト・ロケーション管理は重要です。
しかし、基本は「5S」の中の「整頓」という基準の中の「三定」です。
「定位:決められた位置(場所)」
「定品:決められた品物(置くもの)」
「定量:決められた量、故に決められた荷姿(量と置き方)」
固定ロケーションの場合ならば、場所という住所を基準に固定した商製品が置かれて登録されるでしょう。
フリーロケーションの場合ならば、場所という住所を基準に商製品(住人)自体は時々刻々と変化(引っ越し)しながらも場所という軸で登録されるでしょう。
引かれる(使われる)からこそ補充される、これもまた一つの流れとして設計しておく必要があるでしょう。
故に、最初に「定位」が来るのです。
「定位」という「住所」が決まるから、そこの住人を決められます。
「定品」という住人です。
これは、固定ロケーションでも、フリーロケーションでも変わりません。
そして、場所を決める以上は物理的な制約が嵌ります。
スペース、空間という制約です。
故に、「定量」という基準が決まります。
このように、順を追って流れという軸を決めていく必要がある訳です。
その上で、
〇 使う順番に置く
ことが重要になります。
当たり前のことですが、当たり前に出来ていない基準です。
そもそも、使う順番自体がきちんと把握できていなかったりするのですから当然かもしれません。
使う順番を決めるための基準自体が曖昧だから仕方がないことかもしれません。
では、その基準を明確に設定すれば良い訳です。
これは、条件「整理」となります。
「整理」の仕方としては、
・ 量の過多
・ 使用頻度の過多
・ 嵩張るかどうか
・ そして、如何に運ばないようにするか
このように軸決めすると、量が多いものや使用頻度が高いものはメイン通路に沿った置き方になるでしょう。
但し、ここにも優先順位が付けられます。
基本はピッキングをしていくことになりますから、出荷口に対して近いか遠いかという基準です。
なるべく運びたくないという大切な基準を入れ込んでいますので、こういう視点が入ります。
無論、物理的に運搬治具に積みやすいかどうかという検証は必要でしょう。
土台となる荷物が無ければ運びにくいことも有るでしょう。
嵩張るかどうかも、同じような目線で判断が可能です。
これらの条件付けが、ピッキングの3点セットの次の基準である「運搬具」の条件決めにも繋がります。
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