2025/03/19
「5S」を仕組む意味 「5S」とは? ③ 赤字脱却(収益改善)に向けた「5S」の効果とは?:コストダウン(原価低減)効果

「5S」の目的
① 【売上を増やして、コストを下げること=収益改善】
② 【組織文化の変革(良い組織文化の醸成)】
1、【コストを下げる(原価低減)効果】とは
今回の主なテーマは「5S」の持つ三つ目の効果である、【問題の顕在化=目で見る管理の導入】です。
まずは最初のふたつの「S」、「整理」と「整頓」がこの効果に対してどのように貢献するかをお話します。
これまでも繰り返しお伝えしてきましたが、「5S」のうち、「整理」・「整頓」を進めていくだけでも「要不要の基準」・「モノ(情報)の置き場・置き方・量:即ち在り方)などの「基準」が決まってきます。
「要・不要の基準」をもとにした、「定位・定品・定量」すなわち三定といわれる「(在り方の)基準」への展開です。
この基準が形になってくると、必要なモノ(情報)或いは仕事そのものや仕事を構成する作業にも必要な条件(基準)が具体的に【見えて】来ます。
その結果、必要な条件(基準)のみを残すよう順次絞り込まれていく状態へと変化していきます。
〇 ここから見込まれる効果=ムダの低減=余裕率の顕在化
「7つのムダ」
加工そのもののムダ
在庫のムダ
不良や手直しのムダ
手待ちのムダ
造り過ぎのムダ
動作のムダ
運搬のムダ
いわゆる7つのムダのうちの「在庫、造り過ぎ、運搬」等のムダは確実に減ります。
不要なものが減るわけですから当然ですね。
合わせて、仕事や作業にも基準の更新が入りますから、「手待ち、動作」等のムダにも効果が波及します。
決まった場所(条件)にモノや情報が置かれるわけですから、探す・迷う・仮置きするような「動作のムダ」や、タイミングのズレから発生する「手待ちのムダ」も確実に減ります。
過剰品質より発生する「加工そのもののムダ」や、品質基準を満たさなかった故に発生する「不良や手直しのムダ」についても、仕事そのものや作業の【要】の条件を洗い出す「整理」や設備や道具の保全基準である「清掃」の更新と絞り込みを行うことで順次低減が図られます。
因みに、ムダとは本来やらなくてよりこと、裏返すと「余裕率」であることを補足します。
余裕率とは戦力の顕在化、新たな稼ぎへのチャレンジの原資ともなります。
2、見えることの重要性【目で見る管理】
【見えないものは測れない(良し悪しの判断が付かない)】
どなたの言葉でしたでしょうか。
〇 悪いコスト
ムダ
価値を生まないもの
人の時間を奪うもの
人の余裕を奪うもの
従業員の給料やボーナスの原資を奪う(減らす)もの
日常の風景の中に溶け込んだ厄介者
etc
何よりも厄介なのは、日常の風景に溶け込んで見えなくなっていることです。
故に、見えるようにすることが必要なのです。
即ち、【ムダの顕在化】、お日様の下に引っ張り出すのです。
そうすることで初めて、良し悪しが測れます。
「5S」には、そのためのサイクルが内包されています。
「整理」「整頓」「清掃」という基準更新、それをやり続けるための仕組み化としての「清潔」と「躾」というサイクルが。
だからこそ、「5S」の進展(浸透)ともに生産性の向上が図られるわけです。
3、見えないことの悪さを理解しているか?
因みに、「探す・迷うことの悪さ」、「分からない者同士の相談会」等の悪影響の度合いをどの程度のものと考えているでしょうか。
世でいう「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を含め、この悪さを減らすための取組みとも言えるほど、「生産性≠仕事のやり易さ」には大きな影響を与えています。
(人材の定着度合いも含めて、ですね。)
但し、アナログで出来ていないことを無理にデジタルに置き換えると、別のムダが発生する危険性が高かったりもします。
使いこなせないシステムの面倒を見るという新たな仕事という名のムダの発生の危険性、ここは考え所でしょう。
仕事を円滑に進めるための基本は「情報の共有化」です。
「必要な情報を、必要なメンバーが、必要な時に使う、更新する」ことです。
これが仕組まれていないために、「迷う」「探す」というムダが仕事の顔をして紛れ込んできます。
多くの大切な時間を奪うために。
「報連相」の仕組みが出来ていないため、「分からない者同士の相談会」がそこかしこで発生して、時間が浪費されていきます。
権限と責任、組織間の情報の流れ=組織図の本来の目的が「整理」されていない上に、中途半端に「整頓」されて形骸化されてしまった為に、意味のない【稟議】がぐるぐる回っていきます。
【稟議】って、本来はそのポジション(仕事の枠:役割)で判断できない事項について上に相談(上申)する仕組みのはずですが、不思議と何でもかんでも【稟議書】を書かせたがるのですよね。
このように考えると、「5S」という「モノの見方・考え方」の効果を実感いただけるのではないでしょうか。
そして、生産性の向上に直結する「モノの見方・考え方」であるということも。
「5S」の大きな効果のひとつがこの【目で見る管理】の導入に仕組み的に繋げる点です。
更に、「正常・異常」が目で見えるようになると、管理範囲を広げることが可能となります。
正常値を外れ、異常が発生した時だけ対処すれば良いわけです。
即ち、「管理基準」の更新と管理的な業務の生産性向上にも繋がります。
重要なことは、誰が見ても正常・異常が判る環境をいかに作っていくかということです。
そのためも、「5S」は実に効果的なモノサシのひとつというわけです。
4、「清潔」 : メンテナンスの入り口
次は、「5S」における3つめの「S」である、「清掃」について考えます。
この言葉の意味は、
「いつでも使えるように、きれいに掃除すること」
です。
ポイントはやはり「いつでも使えるように」すること、結果的に仕事を楽にしてコストを下げるために効果的な【保全】に繋がる重要な考え方です。
補足ですが、「いつでも使えるように」とは、誰を対象にしているかも重要ですね。
自分自身は勿論として、自分以外の職場の誰もが、という風に基準を設定してみると、職場の風景が大きく変わるはずです。
ここにも、【目で見る管理】が当然のごとく適用されます。
【保全】とは、「設備を通じた生産性向上のための管理活動」のことであることは皆様ご存じだと思いますが、実態としては「事後保全」=壊れてから直すことの方が多いのではないでしょうか。
しかし、本来は「予防保全」=劣化を可能な限り抑え、壊れないように事前に策を打つことが望ましいはずです。
そのために、一番重要なのが「清掃」となります。
では、なぜ清掃が一番重要なのでしょうか。
その理由は、【保全】の基本的な手順からも見て取れます。
【保全】の基本的な手順は、
「清掃―給油―点検(増し締め)―交換」
となります。
お気づきの通り、手順の最初に「清掃」が来ています。
「5S」は【保全】にも通じているのです。
では、なぜ清掃が一番初めに来るのでしょうか。
「清掃」と【保全】・及び「目で見る管理」は密接に繋がっています。
「目で見る管理」とは、正常・異常が誰の目から見てもひと目で判る状況をつくる(仕組む)ことです。
故に、「清掃」が非常に重要な役割を果たします。
「清掃」が保全のために最初に取り組むべきことである理由も、この辺りにあります。
設備を例にとると、
①きれいにすることで、油漏れなどの異常が見えやすくなる
=汚れていれば、異常が見えません。
②直接自らが触ることが、異常を見つけることにつながる
=触れることで(触診)、いち早く変化を診ることができます。
毎日使う道具や設備だけに、使う人が自ら清掃する=触ることでいち早く変化点を見つけることが可能になると共に、きれいだからこそ(その状態があるべき姿だと「整理」されているからこそ)他の人でも異常に気が付きやすくなるわけです。
モノ(設備や道具)は声に出して訴えかけてはくれません。
(実は異音や振動などで変化を知らせてくれることもありますが。)
しかし、触ることでその声を聞き取ることは可能です。
そして、日々の清掃という訓練が、職場の小さな変化に対する感性を鍛えてくれます。
結果、設備が壊れる前に対応が可能となり、生産性の低下を防ぐことにつながってきます。
ただし、ひとつ重要な条件があります。
単にきれいにするだけでは足らないということです。なぜ清掃するか?という目的を共有することが絶対条件なのです。
最初に、「5S」のふたつめの目的は
【組織文化の変革(良い組織文化の醸成)】
「5S」3つめの「S」である「清掃」は、この目的を果たす結節点としての機能をも持ちます。
日々の取組みは小さなことのようですが、そこに明確な「目的意識」を持ってこそ、生きてくる「ものの見方・考え方」なのです。
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