2025/08/06
「製造業における収益改善」⑪ 在庫管理について ③
【目次】
1、仕事の滞留について
2、「質」の重要性
3、悪さは出荷口に近い場所で顕在化する
4、良かれと行う個別対応の足し算が、悪い意味での負荷の掛け算になりかねない
5、バッファ(在庫や予備工数含む)を仕組む意義
【要点】
・ 仕事は数珠繋ぎで進んでいく
・ どこかで詰まれば、どこかに負荷が発生する
・ 営業側の都合が、流れを狂わせる最大のポイント
・ やはり「質」は大切、作業の質、素材の質等は品質に影響を及ぼし、人員を含めた構えの質は仕事そのものの質に大きな影響を及ぼす
・ 管理職が基本的にルーティンワークに入らない理由、それは構えの質を維持するため
・ 緊急応援は管理職の重要な仕事のひとつ
・ 最初は小さな波でも、後工程に波及していくことで悪い意味で大きくなる
・ 予想外とは発生するもの、重要なのはその振れを自工程以外に波及させないこと
・ 在庫(場所、間口、奥行き)、工数余力(多能工化、管理職による応援等)等を含め、異常を他工程に波及させないように仕組むこと
1、仕事の滞留について
そもそも、在庫をはじめとするタイミング合わせの道具はなぜ必要なのでしょうか。
リードタイムを充当するのに必要なことは大前提となりますが、他に意思を持って留めている側面も当然あります。
しかし、気が付けば増えていることの方が多いのは何故でしょうか?
理由は意外と簡単だったりします。
在庫や業務的なバッファ(この場合は残業等を含む)が増えるという現象の裏には、前後の仕事のタイミングが合っていないという仕組みの悪さが顕在化していることがほとんどだからです。
無論、この仕組みの悪さが顕在化したということは、その職場に何らかの変化点が発生したこととセットになります。
その変化点の発生ポイントは3つとなります。
・ 前工程
・ 自工程
・ 後工程
〇 前工程由来の場合
前が後ろの都合を考えないで押し込んでしまえば、当然の結果として溜まります。
そして、押し込んだ側は後ろ側に渡した(押し付けた)つもりでいますから、自らの庭先はきれいなままとなります。
当然、自部署(自工程側)では悪さは見えません。
営業から製造への差し込み依頼等は、これに当たります。
営業とは、情報の格上げ(見込み~確定~納品まで)が本来の仕事です。
但し、お客様都合が行き過ぎると自社に思わぬ負担とコスト増という負荷を掛けることになります。
最も分かり易い例がこの差し込みです。
製造の段取りを無視する訳ですから、意外と大きな影響を及ぼします。
・ 段取り替えの追加発生
・ 材料や仕掛品の手配や順番の立て直し
・ 製造スケジュールの狂いによる手待ち 等
他には、自工程(前工程側)由来として突発欠勤やトラブル(手直し)による遅れ等も考えられます。
結果として、後工程に悪さが顕在化します。
〇 自工程由来の場合
前工程の遅れによる手待ち調整がまず挙げられるでしょう。
前工程の完成品(自工程の素材)が届かなければ仕事は着工出来ません。
その他、突発欠勤やトラブル(手直し)が考えられます。
何れにしても、単純に間に合わなくなるパターンであり、悪さは後工程で顕在化します。
〇 後工程由来の場合
仕事とは繋がりを持って動いていくものですから、何れの理由にしても前工程からの流れが滞れば遅れるでしょう。
また、当然のことながら、突発欠勤やトラブル(手直し)による遅れ等も考えられます。
2、「質」の重要性
前工程が後工程のことを考慮せずに仕事を行うことは、仕事の質に大きな悪影響を与えかねません。
これが定常化してしまうと、コストを抑えるどころか割高のコスト体質が定着してしまい、企業の経営を圧迫します。
他にも、作業の質、素材の質等は当然のことながら品質に大きな影響を及ぼします。
また、突発欠勤に備えた構えの質は仕事そのものの質に大きな影響を及ぼす要因となるでしょう。
そうは言っても、人は怪我も病気もするでしょう。
突発をゼロにすることは不可能です。
但し、事前に構えることはできます。
まずは「仕事に人を付ける」ように仕組むことが考えられます。
これにより、誰か特定の人に頼ることを減らせます。
その上で、管理職から多能工化を進めておくことが考えられます。
基本的に、管理職はルーティン作業を持たないようにすべき点はここにあります。
作業を進める「手」としては予備戦力なのです。
但し、必要に応じてポイントを絞って応援が可能なように訓練を定期化する訳です。
多能工化は管理職に限ったことではありません。
一般職でも、多能工化を進めることで仕事の幅を広げることが可能となります。
それは、自らの仕事の全体像を把握すること、他部署との関係性を理解することに繋がり、最も効率的な人材育成の場となるでしょう。
また、マニュアル化は必須となりますので、ひとつの仕事に対して定期的な第三者チェックを仕組む事も可能となるでしょう。
3、悪さは出荷口に近い場所でより大きく顕在化する
仕事の流れに狂いが生じた結果、どこかに停滞が発生します。
流れに澱みが発生する訳です。
前述の通り、可能な限り仕組みで回避できるようにする必要がありますが、困難なのが実状でしょう。
何れにしても、仕事とはひとつの繋がりを成して進んでいくもの、どこかで躓けば最終的には出荷に近い工程で顕在化します。
これが最終的には物流機能に悪さが集中する理由となるのですが、結局の所これも仕組みの悪さが顕在化している訳です。
・ 前工程
・ 自工程
・ 後工程
何れかに滞留や突発が発生するとき、仕事の流れ(リードタイム)に狂いが生じます。
滞留や突発を回避するために何が起こるかと言えば、後工程に対する押し込みです。
何とか間に合わせようとするため、リカバリーするためには仕方がないことではありますが、発生工程毎で解決しようとすれば、その余波は順次後工程に波及していきます。
出荷するまで、その振れの波は消えません。
というか、順次大きくなっていくでしょう。
これは、ある意味津波と同じです。
沖合での小さな波紋でも、重なれば重なるだけ強く、大きな波へと成長します。
4、良かれと行う個別対応の足し算が、悪い意味での負荷の掛け算になりかねない
最初は沖合の小さな波と同じであろうと、それぞれの部署がそれぞれの都合で補正を行い、その結果を無理に後工程に渡す(押し込みを行う)とき、皮肉なことに在庫としての量やタイミング合わせのための業務の偏りが増えていきます。
本来、このような現象が発生した場合は、全体を俯瞰した上での対策が必要不可欠です。
しかし、全体を俯瞰する仕組みが出来ていない組織では、個別対応の足し算になります。
個別の足し算対応は、組織間を伝播する間に増幅され、掛け算に変換される危険性があります。
故に、経験値的にバッファを持つことになります。
しかし、不思議と必要なものが不足する事態に陥ることが多いのはなぜでしょうか?
仕事とは、お客様を含めすべてが繋がっています。
そして、どこかの偏り(ムラ)を放置すればそこに無理が来る、無理が来るから在庫やバッファ、あるいは瞬間的な工数を掛けるための残業が増える、そして一か所が滞ると全体に波及するものです。
繋がっているから当然ですね。
5、バッファ(在庫や予備工数含む)を仕組む意義
バッファ(在庫や予備工数含む)は全体を俯瞰した上で仕組む必要があります。
予定通りに進まないからこそ、予定は組まれます。
遅れ進み、即ち異常をいち早く把握して対処するために必要なのです。
予想外とは発生するもの、重要なのはその振れを自工程以外に波及させないこと、自工程で収めること、そのためにこそきちんとした仕組みの設計が為される必要があるのです。
この場合の仕組みの設計とは、
・ 在庫(場所、間口、奥行き)
・ 工数余力(多能工化、管理職による応援等)
等が含まれます。
異常を他工程に波及させないこと、これもまた大切な仕組みということです。
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