2026/08/07
「製造業における収益改善」⑭ 即戦力とは
【目次】
1、使う側の力量が問われるという事実
2、「即戦力」という言葉を考える
3、現場にはお金が落ちている
【要点】
・ 使い手の技量次第で結果は変わる
→ 人も設備も同じこと
・ 「即戦力」を「戦力化」するには受け入れ側の準備が必要不可欠
・ 教育は無論大切だが、訓練の方がより重要
→ 場数が人を育てる
・ 経営資源を使いこなせていないこと=現場にお金が落ちていること
1、使う側の力量が問われるという事実
最新設備が競争力を左右することは事実です。
設備だけでなく、情報処理ソフトも生産性を向上させるための大きな武器になるでしょう。
しかし、同じような業種業態では設備、正確には加工機に大きな差異が生じることは少ないように思えます。
基本的には、同系統の加工を施す訳ですから、どうしても同じような設備になってしまいます。
では、同じような設備を持つ者同士で、何が競争力の違いとなるのでしょうか。
それは、価値を造り込むために道具を使いこなす人財とこれまで培ってきた知見いうことになるのではないでしょうか。
設備はあくまでも道具です。
道具とは、使いこなす側の熟練度によって結果が大きく変わります。
それと共に、使いこなすには経験が不可欠であり、経験とは実践の中で実際に見聞きして得た「知見」の積みかさねがあってこそなせる業と言えるのではないでしょうか。
これは、設備に知恵をプラスするときにも重要になります。技術の進歩は情報制御をより高度化していきます。各種センサーや制御システムによりこれまで以上に自動化が進むでしょう。無人工場もある意味不可能ではない時代です。
しかし、多品種少量短納期を求められる中小企業においては、まだまだコスト的に実装が困難なことも事実です。それ故に、現場の知見と仕組みの更新の合わせ技で効果的且つ部分的な自動化が必要不可欠ではないでしょうか。これもまた、「知見」の有効活用が必須となります。
2、「即戦力」という言葉を考える
最近では、人の熟練度の影響を抑制するための自動化やAIを活用して設備自体に知恵を持たせるような方向に進化を始めているようですが、やはり使う側の巧緻で結果に差異が出ることは変わらないでしょう。
では、使う側、要は人に対する要求度は変化しているでしょうか。
転職、中途採用という言葉が当たり前になりつつある昨今、良く耳にするのが「即戦力」というキーワードです。
しかし、実際に即戦力という存在を目にすることは皆無ではないかと感じます。
企業毎に「即戦力」という言葉の捉え方、望む意味合いが違うことがあることが要因のひとつと考えられます。
また、獲得した人材の能力やスキルが高いことと、それを企業側が使いこなせることの間には大きなギャップがあることも事実です。
受け入れ側である企業側が使いこなせる環境や仕組みが整備されていないのです。
一般的に言われているジョブ制とは違うかもしれませんが、「仕事に人をつける」ことに慣れていないのです。
「人に仕事をつける」状態から脱していないことと、仕事自体の基準の更新の仕組みがないこと、あっても機能していないことが原因でしょう。
「即戦力」とは、聞こえの良い言葉です。
しかし、「戦力」を「戦力」として機能させるためには、基準に基づいた訓練が欠かせません。
その訓練が、新入社員レベルの初期訓練である必要はありません。
スタートレベルを一定の社会的、あるいは業界的、職種的等一定の経験値を持った前提にすれば良いのでしょう。
それもまた基準です。
但し、人に場数を踏ませて育てるための仕組みとは訓練を含みます。
一定の基準を設定した上で、過去の経験値を踏まえて実戦形式で場数を踏ますことは不可欠でしょう。
例えば営業、
・ 自社の製商品知識を期間内に覚えてもらうこと
・ 取引先や先方担当者等への初回訪問スケジュールを立てさせること
・ 同行訪問のアポを取らせること
・ 商談用の社内プレゼン訓練を仕組むこと
等、色々と考えられるでしょう。
上記は基本的な項目ですが、いくら「即戦力」とはいえ最低限は身につけなければならないことでしょうし、相手の力量を図るための場も必要ではないでしょうか。
その上で、上司格が接し方や距離感の取り方、任せる範囲や振返りの基準等をすり合わせる必要もあるでしょう。
意外と出来ていないことではないかと思われます。
3、現場にはお金が落ちている
現場にはお金が沢山落ちています。
これは、実際に自らの仕事の「整理」の指導を受けたときに痛感させられます。
それが、基本的な「整理」のベースとなっているも間違いありません。
仕事の中で、本当に価値を生み出す「正味作業」は全体の10~15%程度と言われていますし、この点も経験的な相場観として大きくは間違っていないと感じます。
私自身、自らの業務分析をこのような視点で行うことはなかなかに面白くない経験でしたが、振り返ると非常に役に立つ経験だったと感じています。
現場(職場)に落ちているお金を活きたものにするために、人の持つ限られた時間を1秒たりとも無駄にしないために改善をするためのひとつの手法と言えるでしょう。
これは「改善」という取組みの基本的な考え方ですが、視点を変えるとこれもまた使う側の力量が問われるという事実を表しています。
例えば、人が機械の番人にならないように、異常があれば機械が判断して止まるようにすることや、デジタル化で簡易化することも同じようなものでしょう。
何をも持って正しいと考えるか、「あるべき姿」を描く力が問われます。
但し、それもまた訓練次第と言えます。
まずはアナログでやってみる、うまくいかなければうまくいくまで試行錯誤する、その中で必要な条件の「整理」を進めていくという訓練です。
失敗の練習=チャレンジという「5S」のサイクルを回し続けること、これに尽きます。
より良い設備(道具)を選ぶだけなら、資金力の勝負となります。
しかし、その設備(道具)を使いこなすための工夫で競争力には大きな差異が発生します。
「即戦力」と言える人材でも、使いこなせなければ宝の持ち腐れとなります。
人を活かすためにも、予め社内で準備するという工夫が必要です。
受け入れ態勢をどのように更新するか、これは社外から受け入れる「即戦力」ではなく、受け入れ側の事前準備が結果を大きく左右します。
これら全てが、実は現場に落ちている「お金」と言えます。
経営資源を更に有効活用できる糊代、これを見えるようにするための仕組みが結果を大きく左右するのです。
そのために必要なのは、基準を決めた上での行動です。
但し、その基準には100点はありません。
まずは仮の基準を決めて行動する、これが全てのスタートラインとなります。
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